「ヒグラシ」より

生活意匠誌「ヒグラシ」創刊号
(1997年9月2日発行)より

私の愛聴盤 ● CD REVIEW-RELAY
あの人は普段、どんな音楽を聴いているんだろう?

片山旭星 1955年、愛媛県生まれ。琵琶演奏家。1977年より筑前琵琶を菅旭香に師事する。88〜89年、新内を岡本文弥に、90〜96年、肥後座頭琵琶を、最後の琵琶法師と言われた山鹿良之に師事。その旋律、奏法を次代に伝える唯一の後継者と言われている。古典のみならず、現代邦楽、民族音楽などジャンルにとらわれない演奏家として注目されている。さらにジャズミュージシャンやダンサー・詩人とのセッションライブをおこなったり、演劇、舞踏の音楽製作・作曲を手掛けるなど、幅広い活躍を通して琵琶という楽器の持つ独特の音色を生かした新たな可能性を追究している。テープアルバム「SAYAGI」「SELENE」をリリースのほか、94年に和楽器と語りのCD「いにしえ」、95年、コンピレーションアルバム「寿」に参加。

J・ゲージ
「プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード」
高橋悠治(プリペアド・ピアノ)

DENON
COCO-7079
音楽に偶然性・沈黙・不確定性を取り入れた作曲家J・ゲージは、僕にいろいろなイメージを与えてくれます。その中でもピアノ弦の間に様々ものをはさむことによって、ピアノの音を打楽器的に変えたプリペアド・ピアノで演奏されるこの曲は、実に新鮮な音色・響き・静けさを聴かしてくれ、この曲が流れていることが、いつか見た景色のように、演奏が終わった後でも、まだ音が漂っているような気持ちにさえ、させてくれます。

KOTO VORTEX・1
吉村弘の音空間

Paradise Records
PRD-268
琵琶を弾いてる関係で、他の邦楽器と接する機会はよくあるんですが、家では全くといっていいほど聴きたいとは思いません。そんな中でこのCDは好きな音楽のひとつです。環境音楽の世界で活躍している吉村弘の曲を4人の琴奏者が演奏しています。少しずつ変化する単純な音形の繰り返しが、ゆったりとした時空の流れを感じさせてくれます。透明感のある快ちよいミニマルの音楽が、空気と響きあって、やさしいアンビエントの世界を作っています。

SAINT-GERMAIN-DES-PRES
コンピレーション

PORYGRAM
DISTRIBUTION
834182-2
かなり昔、吹田の小さな映画館で「思い出のサンジョルマン・デ・プレ」という映画を見たことがあります。セーヌ川の左岸、詩人は自作の詩を壁に走り書きし、作家は作品を朗読し、歌手は酒場で唄い、学者はカフェで議論を繰り返していました。このCDから聞こえてくるのは、そんな街のモノクロの景色です。ジュリエット・グレコ、イブ・モンタン、ボリス・ヴィアン他の歌い手が、時々流れるセリフと合いまって、サルトルやボーヴォワールがいた街の雰囲気意をかもし出しています。

ヴィオロンとこおろぎ
須山公美子

opera club office
OPR-9602
彼女の4枚目のアルバムです。僕はファンです。以前はよくライブに出かけたのですが、最近はなかなか行けないのが残念です。ピアノ・アコーディオンを弾きながら唄う彼女のうたは、公山節と言っていいような、不思議な懐かしさとモダンさにあふれていて、憧れのような想いと独特の世界を感じさせてくれます。大阪中津のミノヤホールで時々出演しているようなので、機会があったら、どうぞ彼女の世界に触れて見て下さい。