近況報告 2014.4月


 平家物語の成立については、「徒然草」の中に、後鳥羽院の頃、信濃前司行長が生仏(しょうぶつ)と言う盲僧に教えて語り手にしたとの記述があります。そして生仏から5代目の明石覚一が、応安四年(1371年)成立させたのが覚一本です。
 当時、琵琶法師のリーダーであった覚一が、自分の死後、後世に伝承上の論争が起きないように証本として作らせたとされています。
 この時、全12巻に潅頂の巻きが独立して加えられました。建礼門院を巡る物語です。
この事は、平家物語の冒頭で語られる「祇園精舎の鐘の声・・・」の一節とともに生まれ滅んでゆくこの世のいっさいのものは無常であり、涅槃の境地こそが真の常楽であるというこの物語のテーマを特徴付けました。 江戸時代に入ると、版本として、覚一本の流れをくむ流布本が作られ、また、読み本として、源平盛衰記が作られました。この他にもいくつかの「語り本」「読み本」が今に残っています。

 「武士(もののふ)の 有為転変を感ずれば 夢まぼろしの如くにて 夢よりもなお はかなけれ」熊谷次郎直実と敦盛の話の冒頭の歌詞です。
 多彩な登場人物が現れ、それぞれの運命の中で生き、死んでいきます。12世紀の貴族社会から武士社会へと激動する歴史の中で、必然的に巻き込まれていく人間の運命が、その後の時代を生きている民衆の支持を得て語り継がれ、今日でもドラマや小説などいろいろな形で表現されています。

 1995年6月から、96年2月にかけて、京都市と四条畷市で「平家物語シリーズ」として5回に分けて14曲を語りました。そして今回、天理でもう一度シリーズとして演奏させていただくことになりました。 あれから18年たっています。諸々の考え方を変えるには十分な時間です。一から思い起こして臨みたいと思っております。



 一昨年秋から、尾池和夫先生に指導を仰いで仲間内で俳句を作り始めました。といっても、作った句は、まだ30にも満たない数ですが。
 今まで作った句の中で、「旬のもの迷うた末の蛍烏賊」「鎮魂の夏語り部は年ゆきて」の二句が「俳句四季」 に選句されました。
 そして、今回5月号に「誇らしく土手にならびし雪だるま」という句を選んでいただきました。
ホントカヨという思いがどこかにあって、嬉し恥ずかしのことなのですが、まだよくわかっておりません。時々頭の中のスイッチが五七五になる程度です。
 何事も少しづつと思っております。ご指導ください。

 

長かった冬、寒かった春も過ぎて、春本番です。

夢抱き春行く人の幸祈る

それではまたです。

2014年 卯月 晦日の頃