近況報告 〜99.春


今年の正月は、久しぶりに自宅でのんびり過ごしました。かみさんの祖母の家の前を走る箱根駅伝を見たのは、 初めてのような気がします。
日本中が節分寒波に覆われた2月3日、京都の吉田山山頂にある大正時代に建てられた「茂庵」での公演は、「いい景色ですねェ〜」「寒いですねェ〜」と言いながら、数寄屋造りの二階家から、冬木立の向こうに雪景色の京都の街を眺めての静寂な中でのコンサートでした。
二歳の娘は積もった雪を見て、「雲が下に降りてきた」と言って喜んでいました。そして「足が沈む」「歩くと音がする」と言ってはしゃいでいました。
3月3日、山本公成氏と共に広島県竹原市に新しくオープンした「かぐや姫美術館」のオープニングセレモニーに参加しました。裏山の中腹に作られた、穏やかに晴れ渡った瀬戸内海の島々が目前にひろがる舞台での演奏は、竹薮をすり抜ける風の音に公成氏のソプラノサックスの音が美しく調和して響き渡り、僕はその中で戯れてました。
金林真多呂師作のかぐや姫人形は後光が射しているような美しさでした。人形を見てそのように感じたのは初めてです。
3月22日、高瀬泰司氏十三回忌「菜の花忌」の音楽イベント出演のため再び「茂庵」へ。この日、季節外れの雪が降りました。僕は晴男だとは、とても言えませんでした。ちなみに、雪女は俳句の季語にあるそうです。雪男はありません。
桜が満開の四月、花見の人々でごったがえしていた京都の円山公園を横目に見ながら、タクシーの運転手は「桜の頃はいいですよ。今まで下を向いてムスッとしていた人が、上を向いてニコニコして歩いていますからね。私はこの時期好きですよ」と言いました。僕はタクシーの降りぎわに「おつりはいいですよ」と言いました。
五月末に大阪を離れて京都に引っ越すことに決めました。そのため只今、ゴタゴタしています。
今後の予定です。

5月23日、山鹿良之師三回忌の追悼コンサートに出演のため熊本県立劇場へ向かいます。96年6月24日、師が亡くなられる1週間前に産まれた娘は、もうすぐ3歳になります。僕はこの日「道成寺」を演奏します。師の故郷である南関町の高校生による人形芝居「娘道成寺」も当日披露されます。一番懐かしいのは、掘り炬燵に入って昔話を聴きながらお酒を飲んでいたことです。

5月31日、大阪十三にあるライブハウス「レッドライオン」(06-6303-9236)での須山公美子氏のライブに、尺八の石川利光氏と共にゲスト出演します。内容未定、乞う御期待です。

6月7日、大阪千日前のトリイホール(06-6211-2506)の楽音ライブシリーズでは、山本公成氏と「improvisation」の公演です。この日は、シーケンサー、モジュレーターなども使って、実験的なこともしてみる予定です。正福院猫丸氏が美術を担当してくれました。すてきな舞台になると思っています。

6月19日、大阪四条畷の「えにし庵」(0720-79-3585)にて鷲山樹心氏の文芸講演、落語家の桂文紅氏と共に「怪異譯」〜落語・琵琶・文芸で描く怨と恨〜と題して講演します。こわい噺がお好きな方はどうぞお越し下さい。

6月27日、京都北山の愛染倉(075-701-0161)では、シタールの井上憲司氏、タブラの逆瀬川健二氏と共に琵琶唄、インド古典音楽、セッションの公演です。井上氏とは7年ほど前に一緒に演奏して以来、久しぶりの共演です。僕はすごく心待ちにしています。

このところ大阪では夏日が続いています。暖かいのか寒いのか分からない今年の冬でしたが、今年の夏はどんなんでしょうか。
それでは またです。                

皐月 新月の頃