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Dr. Charles Colin 著  "Advanced LIP FLEXIBILITIES" 日本語訳
訳:高垣智

太字による強調は、原文のまま)
赤字よる強調は、高垣による)



P.3  Lip Flexibilities 唇の柔軟性


 科学的なトランペット奏法とは、頭を使って知的に専念することが大部分を占めるものなのです。全ての小さな点について注意を向けるべきなのです。掘り下げていくことになる主要かつ重要なテーマは、横隔膜呼吸が適用された、緊張して突き出る横隔膜、そして、柔軟でアーチ型に上がる舌、です。

 うまくいかず失望したトランペット奏者たちは、「華麗な演奏は、生まれながらの素質や肉体的な好条件によってのみもたらされるものだ」と信じ込むという、最も楽な方法で逃げています。この誤ちは、特に、苦労なくただで情報をほしがる、わき道にそれた者たちが犯すものです。もし、ある人が本当にそれをもっていたら、その人は自分の秘訣をただであげるつもりはないでしょう。小数の人はその価値をわかっていますが、彼らはそれはただでもらえるものでなはいと思っています。皮肉なことに、正しくて進歩的な示唆を、決して理解することがなかったり、正しく評価さえしない人がいるのです。たとえそれがただで手に入るものであっても。


Fear Unnecessary  不安はいらない

 華麗に演奏する方法を発達させることは可能でしょう。それは、手品のようなごまかしの方法によってではなく、知的な説明にこつこつと自分を適応させることによってです。私は、新しい生徒をみたときに、彼がそれまでに抱えてきた混乱させている問題を、全て明らかしてあげられるでしょう。ある人にとっては、「横隔膜」に関する話題は、信じ難くて避けるべきものと思えるかもしれません。彼らは、「上達したとしてもそれはまた忘れてしまって、取り戻すことはない」と恐れています。それはもし彼らがこの良く議論された点を試してみたとしてもです。全ての機能の完璧な調和を、無意識のうちにある程度獲得したことが何度となくあったことに気づいている人は少なく、彼らは、その価値を認識することなく捨ててしまっているのです。

 横隔膜の発達による恩恵は、マウスピースの圧力を軽減し、それを横隔膜の筋肉へ移動させることです。これらの筋肉は、発達すると全ての音域において簡単さとリラックスをもたらし、耐久力を増やし、エキサイティングな華麗さの力を与え、これらによって、必要な自信がもたらされます。

 様々なタイプの演奏のために、様々なタイプの音があります。音は自然であるべきだと言われますが、私は、求められる演奏に応じた音のタイプが作られうるものだと考えます。演奏における華麗さは、一番求められていることです。この質を持っていない人々は、なぜ自分がそれを手に入れられなかったのか、時間をかけて分析すべきです。このことに集中すると、知的な観察を通して、ある機能の調和が必要であるということに気づくでしょう。フリーな唇の振動が第一に大事なことです。最小限の圧力で唇の振動を生むためには、豊かで安定した空気が喉から通ることが必要になります。速度をコントロールする活発な空気の流れが、口の上あごに当たります。口内のこの骨の構造が、反響板の役割を果たすのです。


Tougue Plays Vital Part 舌が重要な役割を持つ

 ヴァルブの役割を果たしている舌が、空気の流れをコントロールするのに最も重要な役割を持ちます。広い振動が必要な低音では、横隔膜の緊張度は低くし、高音ではその逆が必要になります。舌をアーチ型にすることが、最も力を持つようになる、その空気の流れを作り出すのです。空気を出す時には、舌の先端によって唇の振動がかなり速まります。このことで自動的に音域は上がるわけです。

 共鳴母音を歌うことによって作られます。これは、口の中で作られるシラブルの違いに限定されます。3つの音域の違いを、次のシラブルを使うことで生み出します。2文字で表すと、「AA(アー)」「OO(ウー)」「EE(イー)」。「Army(アーミー)」の「AA(アー)」、「Two(トゥー)」の「OO(ウー)」、「Tea(ティー)」の「EE(イー)」です。「Army」を発音する時に、舌の位置を確認してみて下さい。口の底で舌がほとんど平らになります。こうすることで喉も開きます。「Two」を発音する時は舌の後部が曲がるのを確認して下さい。このことで喉が閉まることなく自動的に空気の流れを集中させ、「アー」のシラブルよりも唇の振動を速めることが可能になるのです。「Tea」を発音すると、舌の後部が持ち上がり、舌が広がっているのを奥歯で感じます。このことによって、空気の気柱が非常に良い状態になり、その推進力がより大きくなるのです。その結果、唇の振動が非常に速くなります。これら舌の位置をとっても、空気がアーチ型になった舌の上を邪魔されることなく通っていく空間は、充分にあります。突き出て緊張した横隔膜によって空気が押し上げられた時、空気の流れはまっすぐに上昇することを、特に感じ取って下さい。空気の流れが舌の後ろまで来たとき、空気はカーブしたり弧を描くような進み方はしないのです。空気の流れの力は、緊張した横隔膜からダイレクトに噴き上げられ、喉をまっすぐに通過し、音響空間の役割を果たす口の中へと至るのです。


Disproving Theories 誤りを立証する理論

 自分の指を口の中の上あごにくっつけて、そこに空気が循環するスペースがどれくらいあるのか感じ取ってみてください。それによって、舌をアーチ型にするという理論のせいで喉が閉まる、といわれていることは誤りだと立証することになります。舌をアーチ型にせずに、間違った呼吸法、すなわち胸から呼吸してしまうことや、空気の吸い込みが不十分な呼吸をしている限りは、必ず、音をつまらせたり、喉の筋肉を固めてしまったりしてしまうでしょう。音響空間(口の中の上あご)は、ヴァイオリンの共鳴板になぞらえられます。圧力をもった空気の流れは、必要な速度をもって口の中の上あごに向かって上昇すると、上の歯のところに舌の先端が位置することによって、せき止められます。このことが、加えられた強烈な力を蓄え、そして、舌の先端(ヴァルヴ)が銃のように直ちに解放されるとすぐに、空気の流れが、どんなコントロールされたスピードでも唇を振動させながら、激しく打ち出されるのです。舌の先端は、解放されると、下の歯の後ろの固定された位置まで下がり、空気の圧力が唇を通過するための空間を作ります。この結果、唇は自動的に振動し、どんな音域においても音の輝きや大きさを作り出されるのです。



P.4  Lip Trilling and Stretching  リップトリルと唇を動かすこと


 「リップトリル」は、トランペットの用語の中で最も誤解を招く言葉です。一般には、唇を動かすことでリップトリルをやるという意見がありますから、ここのタイトルはそうしました。(しかし)唇を広げたり、口の両端を小刻みに動かすのは、良い方法ではありません。それでは骨折りの苦労をしながらの練習を続けなくてはならず、完璧さを持続させることまでは決して到達しません。この方法で獲得した柔軟性は必ず、失われるのです。その人はリップトリルの奴隷になってしまうのです。

 柔軟でアーチ型になった舌が空気の流れを支配するという事実からすれば、空気の流れをコントロールすることが、自然で永続性のある発達に結びつきます。「リップトリル」のこうようなコツは無理やりなものではなく、だからこそ堅実なのです。母音のシラブルが、よくコントロールされた横隔膜呼吸からの空気の流れを邪魔しないように形作られる必要があります。


Tongue Position 舌の位置

 口笛を吹くときの舌の位置が、正しい舌の形です。舌の後部が上の奥歯の近くにエッジを立てているのを想像して下さい。これによって空気柱が集められ、空気の速さがコントロールされます。空気の流れをさえぎるものがないことが極めて重要です。 それゆえ、舌の先端は下の歯の後ろに下がっていなくてはなりません

 正しくリップトリルを上達させるために、最初の目的となるのは、口の内部で機能しているメカニズムを意識化することです。舌の、後部、中央部、前部の位置と同時に、空気の流れの働きを感じ取って下さい。コントロールするために舌はアーチ型にされ、"hissing"や"hooing"、"harrring"といったフォームで空気柱が母音のシラブルを生み出すことができます。舌はあごとつながっていますから、舌の後部が上の奥歯に向かって持ち上げられると、あごも一緒に上がります。結果として、アンブシュアの この一緒の引き寄せが、必要な抵抗を作るのです。上の奥歯に向かって舌の後部が緊張する事とあごが上がる事は比例していて、これによって、出したい音域によってアンブシュアは圧縮されたりリラックスしたりするのです。

 舌の正しい位置を感じ取るシンプルなテストは、口笛で3度の音程を繰り返し吹いて、舌が上の奥歯に対して上下運動をする位置を感じ取ることです。それと調和して濃縮された空気が舌の上を通過するのを感じてください。このように、舌とあごの両方の速い動きが、アンブシュアにopen-closedの抵抗を与えるのです。

 唇を動かす方法は、昔の学校で伝えられていた遅れた方法です。このような教えでは、生徒が少しリップトリルができ始めるまでに6ヶ月から1年はかかってしまいます。歯の上で唇の組織を動かしてスラーを吹くと、唇を弱めたり音を薄くしてしまいます。唇の発達増進は、舌をアーチ型にすることによって得られるのです。

 音域は、空気のコントロールによって拡げていくことができます。舌によってコントロールされた空気の流れは、どんな形のスラーにおいても音域を拡張させるでしょう。これを正しく使えば、変な方法は使わずにハイCの上のCまでグリッサンドで上がることも可能なのです。唇をすぼめることを付け加えなさい。そうすれば、抵抗やパワーは驚くほどになるでしょう。気づかないうちに、目、頬、唇の筋肉から、力が全てアンブシュアに集められるでしょう。この事実に意識を向ければ、まだ発達していない筋肉が強化されるように使われるでしょう。

 リップトリルをマスターすることは、舌の位置を完璧にイメージすることです唇は広げるのではなく、閉じてすぼめるようにしなさい。空気の流れを解放するために、舌は歯の後ろにつきなさい。真ん中のドの下のソを、替え指(1・3番)で練習しなさい。シ(1・3番)まで空気の流れを速めてから、上の奥歯の所の舌の緊張を和らげることによって空気の流れを遅くして、ソに戻りなさい。すぼめたアンブシュアによって作られた抵抗を感じ取りなさい。いつも、楽な音域でゆっくりソフトに始めるのが最良で、そこから少しずつ上げていくのです

 柔軟なアーチ型の舌によるリップトリルは、アンブシュアを発達させ、安定させます。上の奥歯に引きつけられた舌の根元は、適度にあごを持ち上げ、自然なアンブシュアの接触を生み出します。それによって、アンブシュアの振動に必要な抵抗が作られるのです。これらの全ての力が協力して、音域を上げるのです。前歯にしっかり置かれた舌先の後ろに空気がロックされることによって、拡張された横隔膜全体が吸気の圧力を生み出します。これが、空気が解放される準備の時に、制限のない空気の圧力を作ります。

 空気をリリースする時に、舌の後部の平らな表面が上の奥歯に明確に接近することが、空気の通り道でチューブ型に空気を挟む効果を作り出します。上の奥歯に対して舌が緊張したりリラックスしたりすることによって、空気の流れをコントロールする仕組みを作り出します。同時に、舌の上下の動きが、アンブシュアの抵抗に、より柔軟性を与えます。舌の上を空気が自由に流れるときの、舌の動きの速さや唇をすぼめる速さが、トリルがどれだけ速くかかるか、そしてどれだけ綺麗にかかるかを決めるのです。



P.5  Importance of the Tongue  舌の重要性


 トランペット奏者たちは、奏法のどんな要素よりもアンブシュアの機能や唇の位置について、たくさんの「理論」を持っています。マウスピースの中にどれくらいの割合で上下の唇を入れるかについて、多くの理論でいわれていることは、おおよそ、次の通りです。(1)上唇の赤い部分をリムの上に。マウスピースの中ではなく。(2)マウスピースの3分の2を上唇にあてる。(3)上唇に半分、下唇に半分ずつあてる。(4)両方の唇の赤い部分を、マウスピースの外に。(5)両方の唇をマウスピースの中で巻き込む。

 しかしながら、最も賢明な人たちは、マウスピースが最も心地よく感じられ、唇が最も自由に振動する位置が、どんな位置であれ正しいマウスピースの位置であると考えています。全ての奏者の唇の形にはそれ自体に個人差があるのです。従って、一番いい位置は「上下半分ずつ」などと言うのは、明らかに馬鹿げているのです。


Embouchure Security アンブシュアの安全性

 よく初心者が言う良い方法として、「少し唇を横に引く」というものがあります。(しかし、)この方法は良いと言われすぎかもしれません。不必要に唇をのばしたりすることなく、唇をすぼめてより強めに閉じれば、本能的に、唇はマウスピースの中に入り込み、アンブシュアの安全性をかなり大きくしてくれます。振動する唇の組織は、振動することだけのために使われるべきで、ビブラートや圧力、音域を変えることのために使われるべきではありません

 すぼめた唇は、強さを与える効果がありますが、唇を逆の方向に広げるしまうと、唇を弱めやすくなってしまいます。唇の強さを確保するためには、両唇を閉じてすぼめるのを同時に行うべきなのです。頬をしっかりをセットして保つことによって、健全なアンブシュアに必要な力、顔の全ての筋肉からもたらされるのです。それらは、目、頬、上唇、そして口の両端の筋肉です。低音から高音に上がる時、両唇は接近すべきです。これは、下唇を少し上げることによってなされ、それにより口の両端の筋肉が引き締まるのです。それはまた、空気の流れをコントロールすることにおいても直接的な関係があります。そのプロセスは、空気の流れを上げ下げすることにあり、それによって、コントロールされた抵抗がアンブシュアの引き締めに影響を与えるのです。その技術は、下唇を下げてすこし(アパチュアを)拡げ、それによって豊かな振動と響きを低音に与えます。唇を圧縮して閉じれば 、アパチュアが小さくなり音域は上がります。


Vital Body Resistance 不可欠な、体の抵抗

 唇の圧縮の度合いが、体の抵抗をコントロールします。このような抵抗は、金管のマウスピースを演奏するのに不可欠です。その方法について議論しましょう。いくつかの方法があります。横隔膜の後ろ側の筋肉が普通に働いた時の、イスの背に対する圧力を感じ取ること。また、太いベルトを横隔膜の周辺に巻いて、演奏中の正しい圧力を感じ取ること。さらには、体中に緊張が走るくらいまで楽器を硬く握り締めること。体のリラックスを保てることがほとんどなく、体が硬くなったままであることがあります。彼らは脚を組んだままだったり、だらりと座っていたりします。しかし、常に、まっすぐに座ることで、肺は自由に機能するための広い空間を持てるのです。

 舌の位置は、強いアンブシュアを作ることにおいて非常に重要な役割を果たします。舌の位置についての確立した概念は、振動する唇の開きに直接の関係を持っています。両唇の間の大きな開きは、高音域では安全性を脅かします。このような難点を抱える人は、アタックをする時に、上あごに舌を近づけてから、上の前歯の裏でタンギングすべきです。このちょっとした違いが、次第にマウスピースの中に両唇をより多く入れ、間違いを確実に矯正します。上唇をほとんど使わず唇の間でタンギングしている人は、文字通り「歯で演奏する」と言うくらい、マウスピースの中で唇をほとんど使っていません。この不快感は、マウスピースをもっとグリップする必要を生じます。結局それは、余計な圧力を生じ、血液循環の停止を招くことになります。このような圧力をさけるために、私たちは上の前歯の裏でタンギングし、それもできるだけ上あごに近づけて行うことを提案します。これによって自動的にあごは押し上げられて、両唇は近づきます。これは、それ自体で、どんな余計な圧力も和らげます。

 私たちは、唇がより自由に振動するために、マウスピースの中により多く唇を使うことを、はっきりと主張します。偉大な黒人の奏者たちが、生まれつき厚い唇を持っているのを観察することは興味深いことです。疑いもなく、彼らは耐久力やスタミナ、音域の技術をマスターしています。Louis Kleopfel(New England Conservatory元教授)の演奏を聴くといつも慰められました。彼は、唇の厚い黒人の生徒を教えることに喜びを持ち、そして特に、彼は、振動に最も向いている唇の形に関する類の、馬鹿げた理論を打ち砕いたのをどれだけうれしく思ったことでしょう。彼は、唇が厚ければ厚い人ほど、唇を多く使わなければならないことを証明したのです。




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