How the Method Works and How to Use It
このメソードの機能と、その使い方
An Approach Which Takes into Account Indiviual Abilities
個々の能力という観点からのアプローチ
秩序だった練習の仕方を学ぶには、その人の「実際の」個人的なアプローチによって、練習を計画しなければなりません。
これはどんな意味でしょうか?
個人的なという言葉は、奏者の個性に関係します。トランペットを吹く全ての人に必要な才能や性質に関する範囲で、その人の生まれ持った音楽的才能や肉体的条件について理解することです。
奏者の個性というのは、たとえば次のようなものを含みます。楽に音を出す力。容易に技術的な手順に熟達する力。音を改善しながら広い音域を演奏する力。休憩後すぐに「フォーム」を回復させる力。その一方で、次のようなものも挙げられるでしょう。細い、窮屈な音を出すこと。難しさという点だけの技術的上達。同じエクササイズを何度も何度も繰り返しても、すぐに後戻りしてしまう傾向。広い音域で音を出すことの困難。唇の筋肉の弱さ。など。
実際のという言葉は、私たちは(練習でもコンサートでも)まさに演奏している瞬間に、自分の肉体的条件、特にトランペットの演奏に必要な筋肉(第一に唇の筋肉の状態)について、理解するということです。また、「実際の」という言葉は、個人のいかなる時の心理的状態についても理解するということでもあります。奏者の実際の状態というのは、その人の能力に関係することではなく、次のような状態があります。
・唇: 疲れている。赤くはれている。ふくれている。伸びている。柔軟性を失っている。
リラックスしている。弾力がある。乾いている。乾燥している(空気や風によって)、など。
・舌: あまり動きが自由でない。重い。軽い。鋭敏である。動きやすい、など。
・呼吸: 浅い吸い込み。エネルギー不足の軟弱な呼吸。
むらのない規則正しい息の吐き出し、音に大小のうねりやわずかな浅い振動を生み出すむらのある息の吐き出し、など。
・指: 動かない。堅い。緊張している。コントロールできない。柔軟。軽い。鋭敏、など。
どんな練習(やコンサート)を始める前にも、奏者は自分の様々な筋肉の状態を知り、その時の状況でのコンディションを認識するべきです。
これらの様々な条件を集約せていくのは簡単なことではありません。奏者は、練習と同じく重要であるはずの、反射作用のプロセスを通して、自分自身の経験からそのことを認識するでしょう。自分の練習の結果を常に分析しながらの経験、ということです。
どんな時においても、筋肉の状態やトランペット演奏に必要なその他の要素を奏者が知るための最善の方法は、自分の唇筋肉の正確な状態を知ることです。それこそが、演奏に必要なその他の筋肉(舌の筋肉、指や呼吸の組織など)よりも、合理的・有効に、自分の疲労のレベルや、他の練習をするのにどの程度努力が必要かを決めることを可能にしてくれるのです。
もし奏者が少しでも唇に疲労を感じたら、演奏を止めて、唇が休めるまで数時間待つか、もしくは、決して高音に挑戦したり音を無理に出すことはせずに短縮版の練習をするのが良いでしょう。
もし、結局疲れた唇で演奏しなければならないなら、−それはある点で洞察力・先見力の欠如を示しているのですが− それ以上悪くすることなく筋肉の弾力性を回復させようとするべきです。従って、唇のウォーミングアップのエクササイズや、ペダルトーンによる唇の筋肉をリラックスさせるための特別なエクササイズをするべきです。
もし唇を休める時間が取れて、そして時間が許すならば、そのことを利用して、音を発展させる練習や高音の練習といった難しい練習も省くことなく、フルレンジの集中的なエクササイズができ、また、練習曲や楽曲を深く練習することができます。
練習は熟考して計画されたものであるべきで、必要なときに確実に唇が準備できているようにしておくべきです。これは、演奏者が心理的・身体的(筋肉の状態やトランペット演奏に必要な全ての要素)に自分の実際の状態を理解し、注意を払えば、実行できることです。
実際的で個人的なアプローチに基づいた日課練習を計画するというこの新しい方法は、自分の技術を習得する可能な限りベストなコンディションを決定付けてくれます。
Allocations of Practice Time
練習時間の配分
ここで、普段の練習で一日にどれだけ練習時間を取ったらいのか、また、「練習−休憩」の交代について、そして、それぞれのセッションでどのようなことをしたらよいかについて考えていきましょう。
もし、トランペットを一日に少なくとも2・3時間練習するとしたら、その時間を40分から60分ごとの3セッションに分け、午前、昼、夕方(夕食の前)にするべきでです。午前の練習は、軽い朝食のあとに行うべきでです。
または、練習時間を2セッションに分け、60分から90分とすることもできます。この場合は、午前と午後に練習します。
もしくは、同じく2セッションにしても、午前に約2時間、午後に短く30分から40分としても良いし、その逆で30分から40分午前中に練習し、午後に2時間くらい練習することもできます。2時間の練習をすると非常に疲労を伴うことがあるでしょうから、このことは、唇によく注意を向けるべきことを意味するでしょう。
あなたは1日に1度しか練習できないこともあるでしょう。その時は、2・3時間続けて練習をするということは難しいことです。2・3時間続けて練習してしまうと、唇をかなり疲労させてしまい、その後には少なくとも24時間かそれ以上(*註)の休憩が必要になってしまうでしょう。
もし常に練習時間を練習と休憩で交互に分けていれば、1日に5・6時間練習をすることは可能です。
(*註) 個人練習の時間と、オーケストラで吹く時間を比較することはできません。必要な力の程度には違いがあり、また、オーケストラ奏者は個人練習の時間をそれほど持てません。
Practice Time at Different Stages of the Learning Process
さまざまな段階ごとの練習時間
a) 音の出し方を学ぶ初心者の練習時間
全練習時間:1時間。15分から20分に分けて3から4セッションで行います。それぞれのセッションの間には2から4時間の休憩をはさむようにします。筋肉が発達して強くなってきて、6ヶ月ほど経った後、教師のレッスンは30分ごとの3セションに伸ばすことができるでしょう。
b) 1日を練習に充てられる学生の練習時間
原則として、1日に2から3のセッションで練習します。長期休暇中も練習します。
c) すでにオーケストラでの演奏をスタートさせている若い音楽家の練習時間
オーケストラのリハーサル時間は、1日のトータルの練習時間に含めて考えるべきです。午前中にリハーサルがある場合は、朝の練習セッションは短くするか、「柔軟性」の練習に徹するようにすべきです。もしリハーサルが夕方にある場合は、午前中に練習プログラムを完遂することができ、リハーサルの前には「焦点を合わせる」ことに徹することができるでしょう。
どちらの場合でも、オーケストラパートの性質や難易度、そして自分の演奏能力を考慮して、自分が維持できる力の量を自分自身で決定しなければなりません。
d) プロのオーケストラ奏者の個人練習時間
プロ奏者は、プロとしての仕事以外の残り時間で個人練習することになります。オーケストラの中で演奏する前には、それに備えて、筋肉を準備させるための、バランスよく統合された短い練習プログラムや、練習曲(そしてトランペット演奏に必要なその他すべての要素)をこなしておくべきです。
リハーサルや本番がない日には、プロ奏者は、唇の筋肉を強化したり、耳を育てたり、音域を拡げたり、テクニックを完璧にするための、完全な個人練習のプログラムを行うことができるでしょう。
e) コンサート期間の個人練習
コンサートに向けての準備で問題となるのは、本番まで唇をフレッシュに保ち、準備の段階で疲れさせないということです。ですから、コンサートの期間は、激しい練習はせず、優しく吹き、通常の練習ほど力を使わないようにすべきなのです。それに加えて、演奏プログラムの中の特定の部分だけを練習するべきです。全部は練習せず、また、プログラムの勉強を終わらせようとしないことです。もし、ある曲を完璧に知っていないのなら、人前で演奏すべきではありません。コンサートの前には、20分か30分ほどの、筋肉を柔軟にし活発にさせるの役立つエクササイズをするべきです。また、ステージに出る前には、コントロールを保つために、楽器に息を吹き込んで楽器の温度を保ち、単音や短いフレーズを吹いて唇の湿気を保つようにすべきです。
f) 長期間吹かなかった後の練習法
病気や休暇の後に、適切な筋肉組織のコンディションを取り戻すのは、トランペット奏者にとって、最も難しいことのひとつです。自分の普通のフォームを取り戻すのには、初心者の段階に戻り、最も単純なエクササイズをこなすべきです。以前のように調子が戻ってきたら、より複雑なエクササイズを個人練習の時間に加えていくべきです。吹かなかった期間が長ければ長いほど、より多くの注意を払って、少しずつ、フォームを取り戻していくべきです。大雑把に言うと、1ヶ月吹かなかった場合は、調子を取り戻すのに約2週間の個人練習が必要でしょう。自分の能力を正確に把握できる人は、2週間よりも早く自分のフォームを取り戻すことができるでしょう。なぜなら、その人は、自分自身には何が必要なのかということに気づくことができているからです。
演奏レベルに関わらず、奏者は、いつ自分の唇を完全に休憩させる必要があるのか、常に先を見ていなければなりません。ミスや唇の筋肉の炎症によって示されるような、唇が完全に疲労した状態になる前に、吹くのをストップしなければならないのです。唇が十分にストレッチされていて、かなり思い通りにはたらくことを認識できるうちに、休憩をとらなくてはならないのです。
演奏する準備ができている状態に唇を保つためには、自分自身の感覚を分析する方法を知り、その感覚をもとにその時の自分に合った練習の長さと内容ーそれはその時々によって変わるのです−を推論しなくてはなりません。同じレベルに到達するのに、1.5〜2時間練習が必要な時もあれば20分か30分ですむ時もあるということに気がついても、驚く必要はありません。
Lips 唇
唇は、トランペットを吹く時に最も重要な体の部分です。唇の感覚を通して、奏者は体のコンディションのごくわずかな変化に反応できるのです。唇は演奏者の肉体的・心理的状態を測るバロメーターのようなものです。「唇が疲れたら、脳は働かなくなる。」とよく言われます。唇に最善の注意を払うことは不可欠なのです。実際、演奏することによって、マウスピースの下の唇の組織は通常の血液循環を妨げられるわけです。唇が長く押し付けられ続けると、唇の血液循環は困難になり、唇の組織は飢え、血液の交換の働きは遅くなってしまいます。唯一、唇がリラックスした時のみが、もう一度筋肉の血液循環が良くなり、力を取り戻すことができるでしょう。
唇に多大な注意を払うことは、「できるだけ吹く時間を少なくする」ということではありません。それは、マウスピースの圧力を解放する方法を知り、緊張とリラックスの加減の良い方法を見つけながら、有効でより固定的な、考えられた練習プログラムを工夫する、ということなのです。
唇に注意を払うということは、演奏すべきものに対しての唇の準備方法を知ることです。そうすることで、たとえ難しい曲であったとしても唇を過渡に酷使したりせずにすむのです。
高音の練習のように圧力を必要とされる練習に取り組む時に、唇に注意を払うということが意味するのは、マウスピースの下で唇をつぶしたり、唇の筋肉の血液循環を悪くしたり、アパチュアを締め付けるような、けいれんさせるかのようなやり方をしないようにする、ということです。逆に、そのような練習をする時には、唇の組織を圧縮して堅さと密度を高くするようにすべきです。そうして、マウスピースを弾力のある唇の「プラットホーム」に置き、より密な、連続的な音を生み出すことができます。
唇に注意を払うということは、ウォームアップせずに正しく準備されていない冷たい唇で演奏をする、ということではありません。このようにしてしまえば、「使い古した唇(clapped-out lips)」と言われているような、深刻な負傷を負う可能性があります。
最後に、唇に注意を払うということは、冷たいマウスピースを当てない、ということでもあり、また、もし風邪で熱を出したら吹かないということ、そして、唇が乾き炎症を起こしたら、クリームでマッサージするということも意味します。
Breathing 呼吸
Inhalation 吸い込み
呼吸をいくつかタイプに分ける理論−肋間呼吸、腹式呼吸、横隔膜呼吸−は、単に慣例にすぎません。
実際の生活の中では、これらの分けられたタイプというのは本当は存在しません。それゆえ、それらを実際の指導に導入するのは難しいことなのです。
肋間呼吸とは何でしょう?それは腹式呼吸や横隔膜呼吸より強かったり弱かったりするのでしょうか?胸部から息を入れることなく腹から息を入れることは可能なのでしょうか?もしそれが不可能ならば、横隔膜呼吸とは何が良いのでしょうか?もしそれらが互いに独立して存在しうるならば、胸から吸うことと腹から吸うことの違いをどうやって説明するのでしょうか?・・・など。
このような疑問のいくつかに対する答えはあります。しかし、練習ではしばしば混乱に陥りやすいのです。
もし呼吸の間違いが広まっているとすれば、それは実際上の問題が無視されてきたからです。生徒は、楽器を持ち、トランペットを吹く時にはたらく全体のシステムを徐々に発達させてくれるロングトーンやヴォカリーズを吹くことによって呼吸を上達させる、ということをせずに、様々なタイプの呼吸についての理解不能のたくさんの理論に攻め立てられているのです。
トランペット奏者は皆、演奏中の呼吸のプロセスに気づかなければばらないということは明らかです。しかし、練習して上達することから始めて、その後に理論へ、という方が、その逆よりもずっと良いのです。
あらゆる種類の呼吸の間違いは、息の吸い込み方の悪い習慣から生じます。いはゆる腹式呼吸や、とりわけ横隔膜呼吸では、急に腹の筋肉を引き締めるようにするでしょう(これはおそらく楽器を使わずに呼吸を練習することによる結果でしょう)。あなたは「窒息した呼吸(stifled breathing)」をしている奏者を目にするでしょう。その呼吸は吸い込むときに腹を膨らませているけれども、空気を蓄えることができなかったり、できてもわずかです。実際、彼らは息を吸う真似をしているだけで、本当は吸えていないのです。つまり、実際の結果を伴わないで、外見上の体の動きだけが起きているのです。さらには、腹をそれ自体で故意に膨らませることは、喉頭のけいれんを誘発し、息の通りをブロックしてしまいます。
この癖を取り除くのは、正しい呼吸を初めから発達させることよりも難しいことです。多くの場合、この癖は、息の吸い込みはいつもできる限り強く深くしなければいけないという、先入見をもつ間違った考えから生じるものです。呼吸器官の発達はそんなに単純ではないのは言うまでもありません。呼吸は多様であるべきです。量や深さにおいて、呼吸は柔軟であるべきで、音楽それ自体と同様に多様なのです (*註)。
(*註) 人間の呼吸は、それ自体自然な現象です。トランペットの演奏に必要な呼吸は練習によって発達します。息をとるたびに「自分をふくれあがらせる」ことなく、次に吹くフレーズに必要な量の空気を「蓄える」のを自動的にできるようにするのも、練習によってです。
しかしながら、息を吸い込んだとき、喉頭には引き締まることがあってはなりません。呼吸は、緊張や締め付けはなくフリーであるべきです。吸い込みの瞬間、肺は空気で満たされ、それは脊髄に沿った鉛直方向の流れです。息の吸い込みがより深く強くなるほど、腹の筋肉は胸郭に沿ってつり合いよく均一に拡張します。
このように、トランペット奏者に特有の呼吸理論というものを問おうとするのではなく、実際は、「浅い吸い込み(shallow inhalation)」、「中くらいの吸い込み(medium inhalation)」、「深い吸い込み(deep inhalation)」について議論する方がより明確であり、それは前述の「肋間呼吸、腹式呼吸、横隔膜呼吸」とも符合するものです(*註)。
(*註) これら3つの呼吸のタイプは独立しては存在し得ません。
しかし、「深い吸い込み」(横隔膜呼吸)のコンセプトを明確にする必要があります。「最大限の吸い込み(maximum potential inhalation)」と言ってもいいような、あるタイプの深い吸い込みがあります。深い吸い込みと最大限の吸い込みとの間には、原理の違いがあります。
深い吸い込みは、肺いっぱいに吸い込む、通常の呼吸です。たくさんの空気が必要な時に私たちが普通に使うものです。この呼吸は奏者を疲れさせません。しかし、肺に常に存在する予備の容量を使うことによって、さらに深く息をとることができます。それが、「最大限の吸い込み」です。
最大限の吸い込みは、めったに使われず、そしていつも意識的に行われます。奏者は最大限の量の空気が必要な難しいフレーズを吹く時になったら、すべての注意を集中させます。最大限の吸い込みは、自動的には起きません。なぜなら、それは自然のプロセスの一部ではなく、それだからこそ、とても疲れるものなのです(2・3回続けてこの呼吸を行えば、軽い立ちくらみがするかもしれません)。これが、この呼吸はめったに使われない理由です。そして実際、それはほとんど必要ないものです。例えば、交響曲やオペラ、またはソロの中で、1・2回使うくらいで、それ以上のことはほとんどありません。
管楽器奏者の呼吸は、広く自由で深くあるべきです。普段の個人練習では、浅い吸い込みや中くらいの吸い込みを、深い吸い込みや最大限の吸い込みへと変えていくことによって、徐々に深い呼吸にアプローチするべきです。後者(訳者註:最大限の吸い込み)は決して使いすぎないこと。
Exhalation 息の吐き出し
呼吸法を扱ったメソードでは、息の吐き出しよりも吸い込みの方に重点が置かれています。しかしながら、吸い込みの重要性は否定しませんが、吐き出しの方が重要性が低いとか複雑でないとは言えないはずです。
もしあなたが3つの吸い込みの方法の理論を受け入れるならば、同じような分類を多くの吐き出しの方法にすることが可能です。息の吐き出しは様々な音量での音楽的フレーズの構築を支配しますし、また、吐き出しは音質を作り出すことに直接関わることですから、音楽それ自体と同様に多様であり得るのです。音楽的フレーズの内容こそが、息の吸い込みの量を決定付けるのであり、吐き出しでも同じことです。
練習中、長いフレーズや難しいフレーズに挑戦すると、息が足りないと感じることがあります。これは問題をはらんでいますが、解決策があります。
特に、架空の問題を作り上げないようにしなさい。
呼吸に難しさがあるフレーズに関する問題は、「余分な息 (extra breath)」をとることによって解決されます。そしてもしこの余分な息の取り方を正しく知っていれば、音楽的フレーズは損なわれず、逆に、輝かしさと表現力を与えるでしょう。それ以上に、フレーズをワンブレスで吹こうとすれば、限界まで耐久力を引き伸ばせるでしょう。
How to Organize Your Lifestyle: Work, Rest, Diet
自分のライフスタイルの組み立て方:仕事、休養、食事
音楽家という専門職は、一日を通して仕事と休息を交互に必要とし、自身のライフスタイルを決めます。重要な演奏がある時、トランペット奏者は、手作業やスポーツ、散歩といった全く違う活動による休息の間に回復をする必要があり、そのような付随的な肉体的・精神的努力をしなければなりません。
楽器での仕事がない時は、次の仕事に備えて充電をすべきです。だからこそ音楽家には規則正しいライフスタイルが不可欠であり、また、技術の上達にもそれは同じなのです。
それぞれの練習では、肉体的にも精神的にもかなりのエネルギーの蓄えを必要とされます。トランペット奏者は自分のからだの状態に気を配るべきです。アスリートになる必要はありませんが、肉体的にも精神的にも良い状態でなくてはいけません。音楽家という職はそれを求めるのです。日課を組み立てるようにし、日中に少し睡眠をとれるようにすべきです。
トランペット奏者にとって、いつ食事をとるか、そして食べ物の質と量は、食事全体と共に一番の重要事項です。食べ物を消化している時にトランペットを演奏するのはよくありません。なぜなら、演奏のためにエネルギーすべてが必要なのに、エネルギーが消化の活動のためにも使われているからです。満腹状態は、呼吸の容量を減らし、心臓はより強く働かなくてはならず、呼吸の不足を招き、ブレスを頻繁にとらなくてはならないことが口内を乾燥させるかもしれません。演奏するためには、絶対に、唇や舌が容易に動けるように口はうるおっていなくてはなりません。もし口が乾燥しすぎていたら、舌の動きは遅くなり唇は不快になり始めるでしょう。これではそれ以上の演奏はできないでしょう。
粘膜組織の乾燥を引き起こす他の原因は、
−不安、自信不足、動揺を引き起こすことがら
−演奏前にある種の薬を飲むこと(抗生物質、精神安定薬)
−アルコールを飲むこと(「景気づけの一杯」)
−糖尿病、胃炎などの病気
従って、食事は重要な役割を果たすのです。食べすぎたり、塩分が高すぎたり、香辛料が多すぎたり、脂肪が多すぎたり、すっぱすぎたり、焼きすぎたりした食べ物はのどの渇きを引き起こすことや、熱すぎる食べ物は口をやけどさせることは誰もが知っています。
Advice アドヴァイス
−演奏前には食べ過ぎないように。特に練習や本番前には。
−演奏前の朝食は軽いものにします。パン1・2切れと1杯のお茶くらいで。演奏後にだけ、しっかりととるようにします。もし夕方に働かなくてはならないなら(演奏にしろ何にしろ)、食事をとるよりも軽い間食を1・2回とっても良いでしょう。
−熱すぎるものは食べない。
−演奏前は、酸っぱすぎたり、辛すぎたり、刺激の強いものは口を傷めるので食べない。
−本番の日は、日中の休憩後(*)、本番の4・5時間前に軽い食事をとる。
(*)日中に休憩をとらない奏者は、夕方の疲れがものすごく速い。彼の記憶力は不足し、音は滅茶苦茶になり、ステージ上であがってしまうかもしれません。
−エネルギーをすべて回復したいと思うなら、コンサートの1時間半くらい前に、ぬるめのお茶を、ゆっくり、少しずつ飲みなさい。水を少し飲んでもよいでしょう。
−コンサート中は、何も飲まないように試みなさい。(**)
(**)本当に口をしめらせる必要がある人は、きっと、何かの病気になりかかっているか、またはしっかり食べていないのです。
もし演奏中、ステージで口が乾いてしまったら、それを正常に戻さなければなりません。呼吸の仕方を変え、静かに、ゆっくりと、しっかりとコントロールしながら、鼻からの呼吸を始めなさい。こうすると、口内の膜が、口を乾かす冷たい外気からの影響を受けなくなるでしょう。普通、1・2分間、10〜12回このように鼻呼吸をすると、この危機を脱するのに充分でしょう。普通の状態に戻り、落ち着きや演奏を続けることを可能にします。
このように、口腔の渇きや潤いに影響を与える限りでは、飲食物がステージでのトランペット奏者の身体的・精神的状態にどれほど影響するのかを見ることができます。飲食物によっては奏者を弱々しくし、エネルギーのある活動を不可能にしてしまうし、一方で他の食事は奏者を創造的なエネルギーで満たしてくれるものもあるのです。
トランペット奏者の飲食物は、プロフェッショナルな音楽人生において本質的な部分なのです!
Chapter T 第1章
Warming up ウォーミング・アップ
ウォーミングアップ(つまり唇を整えること)とは何でしょう?それはトランペット奏者の体操です。それは練習の開始時にほとんど苦労せずにできる、とても単純な前置きの練習です。
このような練習が筋肉を温め、呼吸を「目覚め」させ、演奏できる状態にします。
これらの練習に加え、ある特別な唇の筋肉の体操を練習すべきです。これは、唇を全体にリラックスさせながら、マウスピースにつけた唇の「演奏位置(playing position)」を変えることから成ります。さらに、唇をリラックスさせる正確な瞬間に、マウスピースを離すべきです。この瞬間と動きはVの記号で示してあります。マウスピースを離す時、唇を突き出して血液の供給を良くし、よりリラックスした感覚を得るべきです。
このウォームアップの目的は、短い時間の中で、不必要な緊張やマウスピースの圧力を起こすことなく、必要な全ての筋肉を準備し、演奏に必要な力を維持できるようにすることです。
ウォーミングアップの間は、短くオープンなアタックを発達させる機会があります(音から余計なノイズを全て取り除くことによって)。また、"toa"という「わざとらしい」アタック("affectation" of attack)や、音の出だしを妨げるシューという音(hiss)も取り除くことができます。このウォーミングアップの間には、「ぼやけたアタック (stutter attack)」に関連する困難をも克服するかもしれません。もしそういったことが起きる傾向があるのならば(この問題についての特別付録を見よ)。
ウォーミングアップの練習曲を吹いている時、奏者は快適に位置を変えながら、とりわけ離したときに急ぐことなく、最良のマウスピースの位置を決める必要があります。同時に、豊かで丸い音を出せるように、呼吸が適切にはたらくよう調節しながら、音作りをしなければなりません。
ウォーミングアップの練習曲は、この本にあるように、それ自体ですべてのトランペット奏者の個人練習のプログラムになり、個人的な統合されたセッションの最初の部分を作ります。
コンディションを考慮に入れると、ウォームアップの章から1つか2つの練習曲を選ぶべきでしょう。8〜10分かかります。そうして、他のカテゴリーの練習に移る準備ができるでしょう。これらの予備的な練習は、朝だけになされるものではありません。1日のどんな時でも、プロフェッショナルな仕事やレッスンの前に、または数時間の休憩の後に唇の筋肉を刺激するために行います。
この章の最後に、演奏前のウォーミングアップの例をいくつか載せてあります。しかし、ヴォカリーズ(Vocalises)や連続的パターン(Sequential Patterns)の章からの練習曲も、あなたが望むものを選んでウォーミングアップの練習曲としても役割を果たすでしょう。
Buzzing バズィング
「バズィング」という言葉は、楽器なしで行われる予備練習を示します。唇は、本当の音をまねするように、マウスピースから音を出すかのように、まさに演奏をしている時のように形作ります。
バズは、それゆえ、ウォームアップの前の段階であり、実際に楽器を吹くための短い準備―唇を肺の―です。バズィングを練習することは、特に長期間吹かなかった後、休日や病気の後で、規則的な練習に戻る前に、お勧めできます。日課練習を格闘する数日前に、バズを行い、そして他のことをしている時や、散歩中に、3・4分ずつ、1日に数回、唇のエクササイズをします。
バズィングはいつもやる必要はなく、必要なときにだけやれば良いものです。
ここに書かれた最初のウォーミングアップ練習曲は、バズィングにも使えるでしょう。または、書かれた音に頼らずに、音階の中の様々な音をロングトーンで吹くこともできるでしょう。
Chapter U 第2章
Vocalises ヴォカリーズ
この章は、ヴォカリーズ、ロング・ノート、「クレッシェンド・ディミニュエンド」ノートに関するものです。
ヴォカリーズ(*)は、旋律的な練習曲で、ゆっくりのテンポで、レガートのインターバルでできているものです。それらは、トランペット奏者の日課練習の特別な位置を占めます。それらは非常に統合された練習で、アタック、音、呼吸、スタミナ、唇の筋肉の柔軟性、リズムと聴覚のコントロール、そしてトランペット演奏に必要な全ての筋肉の同時性を、一緒に発達させるのです。
近頃、音楽家は、上述の資質を、主に音を伸ばすこと(sustained notes**)―「ロング・トーン」であろうと「クレッシェンド・ディミニュエンド」であろうと―を練習することで身につけました。そして今日でさえ、ロング・トーンの練習は、その重要性を失うことは全くありません。それは、呼吸、音、アタック、音の維持、音の安定性、聴覚的認識力といった、演奏に必要な基礎的資質を身につけようとする全ての初心者にとって、不可欠なものであり続けています。
「ロング・トーン」のおかげで、最初に様々なタイプの呼吸の理論の中を骨折ってさまようことなく、練習を通じて、初心者は呼吸の技術をマスターするでしょう。実際の知識を得ることを通して、理論を理解するようになる方が、はるかに良いのです。
これらの、音を伸ばすこと(sustained notes)―「ロング・トーン」であろうと「クレッシェンド・ディミニュエンド」であろうと―は、使われる筋肉に静的な質を求め、テクニックの静的な側面だけを発達させるということが強調されるべきです。それらは唇や舌の柔軟性、柔軟な呼吸や指の敏捷さは発達させません。ロングトーンを吹いている間、使われている筋肉は動かずにとどまり、同じ位置に固定され、それゆえ部分的にしか発達しません。さらには、「クレッシェンド・ディミニュエンド」は唇を疲れさせます。もしそれらをたくさん(全音域で)毎日練習すれば、唇を疲弊させ、技術的進歩はある程度後戻りしてしまうでしょう。
従って、世界中の音楽大学で人々はそれと同じ結果をもたらす他の良い方法を探しているのは当然のことです―もしかしたらより良いものがあるのではないかと―。より時間とエネルギーが少なくすむ方法で。ヴォカリーズはこの機能を完全に満たすのです。
現在、プロとアマチュアの両方の奏者や学生たちは、音を伸ばすことよりもヴォカリーズに多くの時間を充てています。この本は、今までになく、しかも様々な問題(音域の問題、努力の量、など)の解決策を示す多くの教材を与えることによって、今までそうしてこなかった人たちに、今からそれを始めるよう促すものです。
しかし、学習の初期段階では学生はロング・トーンや「クレッシェンド・ディミニュエンド」を交互に毎日練習すべきことは確かに重要なことです。つまり、単純な技術練習(教本71ページの「クレッシェンド・ディミニュエンド」のセクションで述べられているようなもの。つまり音階、アルペジオ、インターバル。)に続いて、5つか6つほど、音を伸ばす練習を連続的に吹くべきです。基礎的な技術―アーティキュレーション、音を当てて伸ばすこと、レガート、少なくとも1オクターブ半から2オクターブをマスターすること―をひとたび獲得すれば、音を伸ばす練習からヴォカリーズへ徐々に発達していくことができます。
どんな場合においても、音と呼吸の均質性をチェックするために、一連の「クレッシェンド・ディミニュエンド」を時々演奏することは、全ての基準のトランペット奏者の利益です。さらには、長く吹かなかった後―病気の結果、もしくはその他の理由で、休んでいた分を取り戻す必要がある時―、「クレッシェンド・ディミニュエンド」の練習は不可欠です。
ヴォカリーズは、個人的な統合されたセッションの第2の部分です。それらはウォーミング・アップの後に行うべきです。
この本では、各練習曲が様々な調で指示されています。練習では、練習では、その難易度に応じて、2〜4つの調を(奏者が選んで)行えば充分です。ページの最初から始める必要はありません。ヴォカリーズの練習は、ロング・トーンも、25〜30分行うべきです。
(*)ラテン語から:それは全て母音に関連しています。音楽ではヴォカリーズは声を発達させるために歌手が練習するものです。ヴォカリーズを練習している歌手と管楽奏者にとって、音を作ることは同じタイプで、呼吸に関連しています。歌手はAH、OH、EE、AY、OOの母音でヴォカリーズを練習します。管楽器でも、TAH、TOH、TEE、TAY、TOOのシラブルを発音するように音を作ります。母音が口腔の容積を決め、それが音質に影響するのです。「歌う楽器」と言うように、ヴォカリーズの概念は、トランペットに矛盾するものではありません。トランペット奏者にとって、ヴォカリーズは音作りのための練習です。
(**)これらの、音を伸ばすことは、終始同じ音量で伸ばすものと、「クレッシェンド・ディミニュエンド」とがあります。後者のタイプは、一息で、次第に音量を増していき、その後音量を落として演奏されます。
(とりあえずここまで。)