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Max Schlossberg  "DAILY DRILLS AND TECHNICAL STUDIES FOR TRUMPET" 日本語訳
訳:高垣智


Notes on the Schlossberg Method シュロスバーグの教本について
by Harry Freistadt

 12年前の同じ月に、世界は、後にも先にもいない最も偉大な教師のひとりであり、全てのトランペットの教師の中で最も優れたひとりを失った。Max Schlossbergは、音楽家であることと同じように人間として愛された存在であったが、彼はニューヨーク・フィルハーモニック・シンフォニーでG.マーラーの時代に24年間演奏し、晩年はトスカニーニの指揮のもとで演奏した。シュロスバーグの教師としての名前の大きさは、彼の生徒たちが現在アメリカの多くのメジャー・オーケストラで首席の座を占めているという事実が証明している。

 シュロスバーグのもとに新しい生徒がやってくると、彼は生徒に、まずロング・トーンを吹かせ、その生徒がトランペット奏法の基本的ではありながら最も重要な2つの要素をマスターしているかどうかを、すぐに判断したのだった。その2つの要素とは、正しい呼吸と正しいアタックである。この2つが調和して、音の質やフレーズのコントロール、難しいパッセージを吹く能力を決めるのである。

 シュロスバーグの教本で最も重要な基礎となるのは、音やフレーズを持続させるために必要な、楽器に一定の息の流れを維持して送り込む力を身につけることである。彼が言っていたことだが、この時にもうひとつ重要なことは、あるパッセージを吹くために必要な息の量を正確に判断して、余分に吸いすぎないことである。肺に余分に息をためすぎたり、何度も頻繁にブレスをとると、息が苦しくなって、結果として吹いている途中で息がもたなくなってしまうのである。

 肺の中の息は、横隔膜に支えられながら舌を押し、舌の先は上の歯に触れている。息は舌を引き下げるとすぐに楽器に流れ込み、音の高さは生まれた振動数によって決まる。

 きれいで安定した音を望むなら、音の「アタック」や「出だし」と呼ばれていることが、2番目に難しい側面である。

 良いアタックを上達させるためのシュロスバーグの方法は、トランペットの音域を、低音、中音、高音というまとまりに分け、低音にはTaのシラブルを、中音にはTuのシラブルを、高音にはTeeのシラブルを使うことである。音を出すためには、唇やアンブシュアを固定し、決してどの音域でもアンブシュアが変わったり崩れたりしないようにしなければならない。音階を吹く時の口の唯一の動きは、Ta、Tu、Teeのシラブルの発音(それぞれ、開いた発音、少し開いた発音、ほとんど閉じた音)だけである。このような母音の変化は、楽器に対する圧力を変化させる――アンブシュアの収縮が強くなればなるほど、圧力は高まり、音も高くなる。

 上記のことを練習するためのシュロスバーグの最も役立つドリルの一つは、TaからTuの音域、TuからTeeの音域をすばやく続けるドリルである。(シュロスバーグのドリルは他に勝るものがないし、全てについて書かれているのだ。)私は、Ta-ee、Tu-ee、Tee-eeのシラブルを使えば上行形のインターバルをレガートで吹けること、――下行形はTe-ee、Tee-u、Tee-aでできることがわかった。このルールがわかれば、間違ったスラーの仕方をしなくてすむ。もし、演奏中に唇の位置を変えなくてはならなくなったとしたら、すばやいパッセージを吹いたり、全音域で音の質を一定に保つことは不可能になってしまうだろう。

 この説明の中ではずっと例としてTの子音を使ってきた。しかし、ここですぐに付け加えておかなければならないことは、Tは強い音や破裂音のパッセージの時だけに使うものだ、ということである。柔らかい音を出さなければならない時には、その音に合った母音の前に、Dの子音を使うのである。そして最後に、フォルテのパッセージでもピアニッシモのパッセージでもこのことは同じであるし、また、唇の位置もどちらの場合でも同じである。


Harry FreistadtはCBSオーケストラで長年にわたって首席奏者を務め、Max Schlossbergとは長い付き合いがあった。初めは生徒として、その後は娘の夫として。
Schlossbergは歴史に残る偉大な音楽家であった。主席の座を占めている彼の生徒の数は、彼の教育のすばらしさを証明している。
Harry Freistadt(のサイン)



Max Schlossberg マックス・シュロスバーグ

 Max Schlossbergは、Daily Drills and Technical Studiesのもとになった原稿より、それ以上の原稿を残している。彼はアメリカ音楽界のトップにいる多くの生徒を輩出したが、そのことは、彼がトランペットをマスターした方法を熱心な生徒に伝えるという彼の能力を明確に示している。  
 彼は1875年、ロシアのリーバウに生まれ、若い頃からImperial Conservatory of MoscowにてMarquard、Putkammer、Adolph Souerのもとで学んだ。その後、ベルリンにて、有名な教師であるKozlicに学んだ。リガの歌劇場で演奏している時期に結婚。ソリストとして、Nikisch、Weingartner、Richterのもとでヨーロッパ・ツアーを行った。1910年、彼はニューヨーク・フィルハーモニック・シンフォニーに入団、以来、彼の最期1936年9月23日までの26年間、在籍した。アメリカに渡った直後にはInstitute of Musical Artで、後にはJulliard Graduate Schoolで、教鞭をとった。
 彼が、決まりきったやり方ではなく、生徒それぞれの特性に対して無限の根気強さをもって接したこと、それがおそらく、彼が教師としてどんな生徒に対しても成功した本当の理由なのだろう。


THE DAILY DRILLS 「日課練習」

 Daily Drillsは、アウトラインでできていて、生徒にはこの中から全てを貫いている基本的な原理をしっかりと理解してもらえるよう望んでいる。ドリルの選択には判断を働かせなくてはならない。演奏者はいつも、自分が吹けるレベルのドリルだけを選ぶべきである。

  この本は、8つの章でできている。
      1.ロング・トーン 2.インターバル 3.オクターブ 4.唇 5.分散和音 6.音階 7.半音階 8.エチュード

 Daily Drillsは、短い休憩をはさみながら、約20分間練習すべきで、その後にさらに集中を要する練習に取り組む準備になる。
 それぞれのグループから毎日いくつかのドリルを選んで練習すること。


INTRODUCTORY NOTES はじめに
by Max Schlossberg


 トランペットの演奏を単純にするために、私たちには3本のヴァルヴの器械があり、右手の真ん中の3本の指で操作するようになっている。全部で7つの指使いがあり、これで全ての音を出すことができる。

それらは以下の通り:

 1.1つめの運指は、オープンと呼ばれているもので、どのヴァルヴも押さない。ド、ソ、ド、ミ、ソ、ドを出すことができる。
 2.2つめの運指は、ちょうど半音低い。2番ヴァルブを押して、シ、ファ♯、シ、レ♯、ファ♯,シを出すことができる。
 3.3つめの運指は、1番ヴァルヴだけを押して(ちょうど全音低くなる)、シ♭、ファ、シ♭、レ、ファ、シ♭を出せる。
 4.4つめの運指は、1・2番ヴァルヴを同時に押して、ラ、ミ、ラ、ド♯、ミ、ラ、を出せる。
 5.5つめの運指は、2・3番ヴァルヴを同時に押して、ラ♭、ミ♭、ラ♭、ド、ミ♭、ラ♭、を出せる。
 6.6つめの運指は、1・3番ヴァルヴを同時に押して、ソ、レ、ソ、シ、レ、ソを出せる。
 7.7つめの運指は、全てのヴァルヴを同時に押して、ファ♯、ド♯、ファ♯、ラ♯、ド♯、ファ♯を出せる。
<譜例省略>

 実際に楽器で練習を始める前に、マウスピースの練習を、毎日少なくとも2分、ソとドの音でスラーとスタッカートで練習しなくてはならない。マウスピースの3分の1を上唇に、3分の2を下唇に当てなさい<訳者注>。
  <訳者注>…このマウスピースの位置については、絶対ではないと考えたほうが良いでしょう。現代の奏者は、上唇下唇それぞれ2分の1に当てる人もいるし、もしくは、シュロスバーグの指示とは逆の、上唇に3分の2、下唇に3分の1という当て方をする奏者も多い。

 以下のマウスピースの練習を毎日やりなさい:
<譜例省略>


 呼吸の時は、アンブシュアを崩さずに、口の両端から息を吸いなさい。
 高音域に到達するには、唇と頬を後ろに張ることと、横隔膜を上げることを同時に行うことが最も重要である。
 低音域では、同じ筋肉を全体的にリラックスさせることが不可欠である。



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